映画日誌 ベストテン 日誌

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 2003年 ベストテン 
第1位 パイラン(韓国 ソン・ヘソン テェ・ミンシク)
第2位 過去のない男(フィンランド アキ・カウリスマキ マルック・ベルトラ)
第3位 船を降りたら彼女の島(日本 磯村一路 木村佳乃)
第4位 イン・ディス・ワールド(イギリス マイケル・ウィンターボトム ジャマール・ウディン・トラビ)
第5位 ボウリング・フォー・コロンバイン(アメリカ マイケル・ムーア マイケル・ムーア)
第6位 8Mile(アメリカ カーティス・ハンソン エミネム)
第7位 トランスポーター(フランス ルイ・レテリエ ジェイソン・ステイサム)
第8位 インファナル・アフェア(香港 アドリュー・ラウ、アラン・マック アンディ・ラウ)
第9位 リベリオン(アメリカ カート・ウィマー クリスチャン・ベール)
第10位 北京ヴァイオリン(中国 チェン・カイコー タン・ユン)
  (凡例 順位 題名 製作国 監督 主演)


  映画を見る本数が減少した。
 学生時代は、1年間に最低365本を基本とし、社会人になってからも、年間200本を維持していたが、今年初めて200本を切り、180本台となった。

  ベストテン選びは、『パイラン』を見た7月の時点から絶望的な状況が続き、年末に至ってしまう。作品名を埋めるだけなら簡単なのだが、質的には、第3位までが限界で、それ以降は、該当なし、と表記したいくらいである。
 これは、見る本数が減ったから、という理由ではなかろう。200本が180本になっても、1割の減。数で考えれば、9本は楽に選出できる率だ。
 まあ、そうしたことをあれこれ考えるのはともかく、第1位から第3位の作品は、文句なしの傑作に他ならない。

  『パイラン』の、黄色い床に始まる平面の強調は、映画がスクリーンという平面に投影されるという現実に、とことんまで接近する、感動的な試みであった。

  『過去のない男』は、『パイラン』とはまったく対照的に、映画が創生期から追求してきた奥行を、各ショット内に、何らかの人工的照明を当てることによって意識させ続けた映画である。

  『船を降りたら彼女の島』は、防波堤に腰を下ろす動作などが、単なる引用に留まらず、その徹底した反復によって、映画の中で増殖を続ける新たな現実のようにさえ思えてくる迫力を持っていた。

  以上の3本に接することができただけでも、2003年は、見る本数が減少したとはいえ、映画との豊かな交わりを実現できた年であったと、多大なる満足感をおぼえずにはいられない。

 

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