山田英司プロフィール
「格闘ストリーミングマガジンBUDO-RA」編集長。「格闘伝説BUDO-RA」編集長。
早大「中国拳法同好会」初代主将。高校時代より中国拳法を学び、台湾、中国などの師につき、八極拳、螳螂拳、太極拳(陳式、楊式)、翻子拳、通劈拳、少林拳、形意拳、劈掛掌、各種武器などを学ぶ。自ら新空手やムエタイに挑み、戦う編集長として知られる。実戦だけでなく、その格闘理論には定評があり、初めて中国拳法の上達理論を確立する。
 Q.突きについて質問します。
 ボクシングや中国北派拳法などは、パンチを打つ時に腰を回転させて、肩を入れてつきます。空手や中国南派拳法などは、パンチを打つ時腰を回転させず肩も出しては突きません 。 この違いは何故でしょうか。 相手に対しても、パンチの効き具合などは異なるのでしょうか。 また、鍛練器具であるサンドバッグ(ボクシング)や巻藁(空手)などによっても、何か効果などの違いはありますか。

  A.オーソドックスなことから答えますと、中国拳法には、南派・北派があって、南船北馬といい、北派は馬に乗った姿勢、南派は船の上で戦う 姿勢から作られたフォームが基本になります。

 船の上のような不安定なところで戦うには、下半身の力を伝えることが難しくなります。狭いところで動きにくく、踏ん張りが効かないところで戦うのですから、腰から上の力で突くしかありません。だから腰の回転よりも上半身の力を利用して突くことになります。 こうした歴史的背景があってこそ、南派のフォームが理解できるはずです。 また、型では南派は正面への移動が中心となり、北派は横(特に左側へ)の移動が中心となります。足を使わずに上半身だけで打つと、外から内へ突く(いわゆるフック系)が中心となり、北派では内から外への突き(その典型は八極拳)が中心となります。

 効き目は鍛練の具合に影響されますが、南派は表面へのダメージ(たとえば骨を折る 、歯を折る、といったこと)、北は内部へのダメージを重視します。
切れの南、重さの北
といってもいいでしょう。ボディへの打撃は重ければ効きますが、堅くても(つまり、表面の攻撃ですね)効きません。 日本の空手は南派から伝わったものであり、空手の試し割りは表面的で、南派的な打 ちからは必然のものだったんです。北も試し割りはありましたが、ポピュラーではありませんでした。 これらはすべて歴史的な過程の結果であり、どちらが優れているかといったことは断言できません。あくまでケース・バイ・ケースです。

 

これが北派。体の稼動範囲が大きくなります。ただし、スピードは遅くなります。

※写真にマウスを合わせると山田編集長が突きます。

  こっちは南拳のフォーム。 小さい動きでスピードが速い。 ロウソク消しなんかをやるときは、こんな感じになります。

※写真にマウスを合わせると山田編集長が突きます。
 
    たとえば現代日本でいえば、狭い電車の中で戦うとしたら、南派が適しているといえるかも知れません。 格闘技は、時間と場所を抜きに考えることはできません。仮に南派と北派を比べると 、どちらを選ぶかは、もはや趣味の問題になってしまいます。 巻藁は、打突面がこっち(打つ人の方)に向いています。サンドバッグは、動くので 、必ずこっちに向いているわけではありません。立体的ともいえます。巻藁にフック やアッパーは打たないでしょう。1点集中が巻藁なんです。 これは、突く部位の鍛練という前提に立っているからなんです。

実は、これは中国の思想から来ているものです。 巻藁は、沖縄で生まれたもののようにいわれていますが、実は発祥は中国で、形の違いはあれ、このような鍛練具を使っていたのです。 たとえば、木人があり、これは沖縄でも使われていました。ただし、ここからは私の推論になるのですが、沖縄にも那覇手と首里手があり、木人が稼働する形のものは掛引手といい、首里手が使っていました。固定式の木人は、那覇手が使っていたと思われます。那覇手は、詠春拳や白鶴拳を継承した拳法であり、詠春拳が使っていた固定式の木人を那覇手が使っていたようです。 ここまでの話は、あくまで伝統の型どおりにやったら、の話で、今の時代に実は差はあまりないと、私は考えています。
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