例年に劣らず、優れた映画が数多く公開されたものの、みずからの行動がそれに追いつかず、関心を抱きつつも、見逃さざるを得なかった映画が増えていることは、自分に対して遺憾極まりないものがある。 映画館で接した本数が、200本を切るという状況が2年続いてしまったことは、深く自戒しなければならず、来年への課題として意識し続けなければならないが、それでもこうして10本くらいは容易に選出され、なおかつ多くの映画が欠落してしまっていることに、映画製作の現状が顕れているような気がする。 1位の『悪い男』は、昨年の『パイラン』同様、韓国映画の偉大なる力を見せつけてくれた。主題は『パイラン』に近いが、そこにガラスと鏡の要素を取り入れ、さらには、開かれた方向性を投げかけた点においては、『パイラン』を上回ってもいる。 2位の『父、帰る』を「水の映画」と言ってしまえば、短絡的と思われるかもしれないが、現代において、映画が水といかに関わるか、という困難に挑戦し、それを映像化したことで、映画の最先端を征(ゆ)く結果が生まれた。『父、帰る』において、水に包まれることは、幸福につながる表現であり、『悪い男』でもそれが視覚化されている点は、興味深い共通点である。 私は、映画を見て人生を思うことは極めて少ないのだが、『こんばんは』と『バレット・モンク』は、人生を反省し、もう一度、消えかけた夢に挑戦を抱かせるに余りある力を持った、映画史を通じて稀有な映画であった。 『ヴァン・ヘルシング』と『アイ,ロボット』は、徹底した上下の表現を追求し、それらとは対照的に、『清河への道』と『THE SONW WALKER』が、広大な土地をひたすら移動し続けることによって、映画の豊かな空間把握術を満喫させてくれるなど、映画が、新たな可能性を切り拓き続けていることを実感させられた。