例年に変わらぬ豊かな映画体験を享受し得た2008年は、3年連続で中国映画が第1位となった。 第1位『馬鳥甲』の液体表現は突出している。雨、血液、牛乳などが、それぞれの性質を介して人間と関わりを持ちながらも、単なる液体としての絶大な存在感を失うことがない。この境地は、時間の大胆極まりない交錯と相まって、他が追及し得ない、現代映画の生を突きつけている。 『七夜待』は、ありのままの生を切り取ろうとする。一瞬なりとも『キプールの記憶』に肉薄する瞬間があっただけでも、この映画は誇るべき資質を持っている。もちろん、市場に突入していく列車など、この映画と現実は、常に緊迫感をもって接し続けており、先の一瞬だけに留まるものではない。 『28週後…』は、表現の激しさに目を奪われるべきではなく、むしろ、何も見えない暗闇などの状況設定と真摯に取り組む姿勢が、『REC』などとは決定的に違って優れている点である。 『ふるさとをください』のゆっくりと進んでいく交渉や運動は、『ナルニア国物語 カスピアン王子の角笛』における登場人物たちの成長がもどかしく遅いことにも通じている。しかし、両者とも、その遅さが緊迫と同時に悦びをもたらすものだ。 『崖の上のポニョ』も『馬鳥甲』と同じく、液体を主体とした映画である。水の表情は実に豊富ながらも、『馬鳥甲』の地平には遠く及ばなかった。 『おくりびと』は、白の映画。『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は、生身の人間がいかに魅力的であり、作り物の動物たちが太刀打ちできないことを再認識させられる。『AVB2 エイリアンズVSプレデター』が表現した距離は、決定的な魅力を有している。